投資をやっている人なら、両建てという言葉を聞いたことがあるかもしれません。FXだけでなく、株、先物取引でも使われる投資手法ですが、1つの投資対象に売りと買いを同時に行うことを言います。売りと買いを同時に同じ数だけ行いますから、相場がどう動こうが利益も損失も発生しません。これが一体何の約に立つのでしょうか?たとえば、米ドル/円を買うとします、しかし、思惑に反して投資信託とFX値が下がり、そこそこの含み損が出てしまったとします。この状況できっぱり損切りができればいいのですが、その決断ができず、とりあえずちょっとまって!というときに、同じ数だけ売り建てておけば、その時点からリスクフリーとなるため、売りか買いのポジションのどちらかを決済するまで、相場が全く動いていないのと同じことになり、考える時間、落ち着く時間が得られます。このように基本的には、両建ては、精神の避難所的な使い方をします。しかし、損切りするよりも手数料もかかりますし、買いスワップで受け取る金利より、売りスワップで支払う金利の方が多いため、毎日金利を払わなければなりません。また、昔暗躍していた悪徳業者が、投資家に両建てを勧め、手数料で稼ぐということが横行していたので、両建て自体にあまりよいイメージを持っていない人もいます。このようなことから、両建てに批判的な意見も多く、イメージが悪いこともあるのか、両建てを禁止している業者も多くあります。プロが積極的に利益を狙ってやる両建てならまだしも、我々個人投資家が、損切りを先延ばしにするためにやる両建ては、好ましくありません。プロは一定期間に利益を上げなければならない、といった理由から両建てで投資効率、資金効率を高めているかもしれませんが、我々は時間的な規制がないのが特権ですから、私は、あまり両建ての必要性を感じていません。 市場の成熟に伴い、多くの分野において、商品そのものによる差別化が困難になっている。そうした中、顧客接点におけるブランディングに競争優位性を求める企業が増えている。店舗はもちろん、コールセンターやWebサイトにおける体験を繰り返すことで、コミュニケーションを深めていき、長期的なファン化を狙う動きがみられるのだ。 『経験価値マーケティング』の著者外国為替・H・シュミット氏によると、心理学者と社会学者は、感覚(SENSE)、認知(THINK)、情動(FEEL)に加えて、次の2つの経験価値的構成要素を示すことが多いという。ひとつは「時間とともに拡張される個人の活動」(ACT)、もうひとつは「ほかのものと関連付ける経験価値」(RELATE)だ。 また、元東京大学大学院経済学研究所教授で丸の内ブランドフォーラム代表の片平英貴氏が提唱する「AIDEES(Attention・Interest・Desire・Experience・Enthusiasm・Share)モデル」は、経験(Experience)を通じて、熱中(Enthusiasm)し、人に推奨(Share)するという顧客の行動モデルである。本誌122号(2006年7月号)の「CRM実践講座」において執筆いただいた(有)金森マーケティング事務所金森努氏は、これを引き合いに出しつつ「惚れ込んで離れられなくなる状態に顧客を導く経験を提供することが重要」と言う。 今回の特集では、“外国為替証拠金取引”をキーに、ファン化を促進、ひいてはブランディングに注力している企業を取材した。 顧客とのコミュニケーションを継続的に行いファン化を推進 (株)千趣会は2006年9月、お客様の声を活かした商品作りを核としたお客様参加型コミュニケーションサイト「くらしのたまご」を立ち上げた。創業当初からの営業担当者による対面コミュニケーションが減少傾向にある中、顧客のリアルな声を聞き、つながりを醸成していく場作りを決断したのだ。サイトの登録会員のうち約65%は同社通販会員。中でも購買実績の高い優良顧客の割合が高く、くらしのたまごによって同社ファンが可視化されたと言える。同社では、商品開発の参加希望者を募り、アンケートや座談会を基に商品化を推進。プロジェクトを通じて、会員同士のつながりや、くらしのたまごと会員とのつながりが深まったとの感触を得ている。 ソニーマーケティング(株)では、2006年6月に発売したデジタル一眼レフカメラ「α」を息の長いブランドとして育てたいと考え、ユーザーとの接触機会を多く設けている。発売時に体験イベントを全国7都市で開催したほか、既存顧客向けのフォロー活動も積極的に展開。ユーザーには、カメラを趣味とし、スペックや機能に詳しい“ハード優先タイプ”と、特定の撮影目的をもつ“ソフト優先タイプ”がいるため、Web上に双方のニーズを満たすようなコンテンツを掲載。さらに有料の撮影レッスンを開催している。経験重視型の施策により、ブランドへの信頼感と新しい取り組みへのキャッシングを育て、ファン化につなげている。 (株)ディーンアンドデルーカジャパンが目指す店舗像は、世界中のファインフードが一堂に集まる食のマーケット。良質な食材の持つ美しさやパワーを伝え、豊かで喜びにあふれる暮らしを提案している。「見るたのしみ」「作るたのしみ」「食するよろこび」を体験し、“食”を五感で楽しめる店舗づくりには、独自の美意識を具現化。商品の陳列にボリュームを出すことで、豊かさや鮮度を印象付け、商品を選ぶお客様に“ワクワク感”を与えることを心掛ける。同社のコンセプトに賛同するリピーターも徐々に増えており、ポイント還元など各種特典を付けたメンバーズカードには8,000人ほどの会員が集まっている。 東芝イーエムアイ(株)では、自社サイトにバナーを表示して外部のECサイトへの誘導を行う一方、アーティストや新譜CDの宣伝・プロモーション展開においても、より早く情報を伝達できるWebを活用。ライブの数時間後には情報を更新するなど、リアルタイムでの情報提供を心掛けているという。動画や着うたなどにより音楽ファンの期待を最大限盛り上げ、楽しみを共有するとともに、アーティストを知ってもらうきっかけへの配慮も欠かさない。具体的なキャンペーンの告知・展開方法は、アーティストのカラーや知名度などによってさまざまだが、プロモーションの進行過程をWebで公開することで、コアなファンとのつながりを実現している。 メディアへの多重露出により、ブランドの記憶を多重化させることが重要 商品自体によるブランドの具現化だけでは差別化が難しい中、経験価値に注目したブランディングの事例を紹介したが、これらの取り組みに共通するのは、リアルとバーチャルをまたがって展開される、コミュニケーションの継続性にあると言える。つまり、さまざまなメディアを駆使して顧客の期待を誘発すると同時に、期待を裏切らないような経験機会を提供し、ひいては顧客同士がそれらの経験を共有するサイクルをつくっているのだ。